家族性高コレステロール血症 (FH)
- LDLコレステロールが高くなる原因として遺伝による要素が、それ以外の原因より明らかに大きな場合、それを家族性高コレステロール血症(FH)と呼ばれています。
- この疾患は常染色体優性遺伝です。
- 両親のどちらかがこの遺伝素因を持っていると、子供は2分の1の確率で、その素因を受け継ぐことになります。
- 両親が共にその素因を持っていると、子供がその2つを受け継ぐ可能性があり、その場合はよりコレステロールの上昇は高度になります。
- この1つの素因を持っている患者をヘテロ型と言い、2つの素因を持っている場合をホモ型と言います。

【発症頻度】
- 世界的にこのホモ型の頻度が100万人に1人で、ヘテロ型は500人に1人という統計が、教科書などには書かれています。
- ヘテロ型の家族性高コレステロール血症に関しては、LDLコレステロールが180mg/dl以上というのが1つの指標になるので、この程度の上昇は家族性以外でも多く認められ、実際には通常の脂質異常症として、診断はされずに治療が行なわれたり、経過観察のみで治療も行なわれていないケースが、多いと考えられます。
【原因】
- その原因は遺伝子の変異によるものと考えられ、遺伝子の変異は主にLDL受容体にあります。
- LDLコレステロールは、主に肝臓にあるLDL受容体にLDLが結合することにより、コレステロールが細胞内で利用されます。
- そこでこのLDL受容体の数が病的に減少したり、正常な働きを失ったりすると、コレステロールが細胞の中に入ることが出来ず、血液中に異常に増加する事態になります。
- それ以外にLDLを構成する蛋白質の1つであるアポ蛋白(apoB)の異常や、LDL受容体の分解に関わるPCSK9と呼ばれる遺伝子の異常も、同様の症状の原因になると考えられています。
【主な遺伝子異常 】
- LDL受容体関連の遺伝子変異
- apoB関連の遺伝子変異
- PCSK9関連の遺伝子変異
【特徴 】
- 生下時よりLDL(悪玉)コレステロール値が高い
- 家族に心臓病や高コレステロール血症の人がいる
- 食事療法が効きにくい
- アキレス腱が厚い
- 動脈硬化により血管が細くなりやすい
- 若い年齢で、心筋梗塞を起こしやすい
【診断】
- FH ヘテロ接合体では最初に高LDL−C血症の臨床所見を認めますが、これが10歳までに現れる唯一の症状です。
- 角膜輪やアキレス腱黄色腫は10代後半から 30歳までの半数に認められます。
- 冠動脈疾患は男性ては30歳以降、女性で50歳以降に現れると言われていますがより若年で発症する例もあります。
- アキレス腱肥厚は LDL−C高値とその曝露期間に影響され、冠動脈疾患発症リスクともよく相関するため、FH の診断には有用です。定量的にはX線軟線撮影で9mm以上を異常と判定します。
- 日本動脈硬化学会の「 動脈硬化性疾患予防ガイドライン2012年版」の FH診断基準では、
- (1) 未治療時の LDL-C 値が180 mg /dL以上
- (2) 皮膚結節性 黄色腫または腱黄色腫の存在
- (3) 二親等以内にFHまたは若年性冠動脈疾患患者がいる
- の3つのうち2つ以上で FHと診断できます。




【治療】
- FHの脂質管理目標については、血中LDL−Cを十分に低下させることが大切で、まずは、LDL-C<100mg/dlを目標とし、”the lower, the better”です。
AHAScientific Statement for FH
